基本的な構造こそ現在のものと変わりはないが、当時はエンジンからトランスミッションへの動力伝達はベルト、走行駆動は左右に独立したブレーキ(乾式ドラム)・クラッチ(爪式)を持つ機械式であった。
ホイール式は舗装路面での機動性の高さが長所であるが、接地圧が高いため湿地や軟弱地における走破性は鉄クローラ式に劣る。そこで新たに開発・導入されたのがゴムクローラである。 ゴムクローラそのものは昭和40年代から農業機械等に使用されていた。本格的な土木作業に耐えうる強度、耐久性を有したゴムクローラを装着した不整地運搬車が登場したのは昭和53年(1978)の八郎潟干拓事業においてである。(写真5)
また、このころから運転座席を前後どちらにでも回転させることができ、どちら向きにも運転できるといった特徴を持つものも現れた。(同じく写真5)ゴムクローラが出現した当初は切断強度が課題であったが、信頼性が向上するにつれゴムの摩耗耐久性が課題となった。それも今日では大きく改善され車速の高速化も可能となり、10t以上の運搬車もほとんどがゴムクローラ式となっている。 一方、ホイール式の不整地運搬車は平成元年(1989)以降、徐々に生産が少なくなり、現在では林業用のフォワーダーとして使用されている一部のものを除きほとんど見ることはできない。 動力伝達方式としても当初は機械式駆動であったものが現在では油圧駆動(HST)が一般的となっており、小型は1ポンプ+1モータ+分配ギヤ、3t以上は2ポンプ+2モータ式が主流となっている。 1-2 最近の動向 不整地運搬車は日本独自の作業車として発展をとげて来たが、平成2年(1990)前後より海外にも輸出され始めた。ホイールダンパーが主流である欧州において、フランス南部、スイス、オーストリアの山間部で資材運搬用としての需要が多い。また近年欧州で散発している天候異変による風水害などをきっかけに、湿地に強いクローラダンパーもその台数を伸ばしている。これに伴い欧州の安全基準を取り入れ、また国内での安全で快適な作業環境への要望とあいまって、国内でも転倒時保護構造(ROPS)を標準装備したものや、5t以上のクラスではキャブを標準装備するものが多くなった。 また最近の動向としては、荷台を左右に90゜旋回させてダンプできるもの(写真6)や、荷台と運転席が360゜旋回可能で任意の方向にダンプできるようにしたもの(写真7)など、作業効率のアップと同時に車体方向転換の頻度を減らし路面やゴムシューの損傷を軽減する効果をねらった機種が登場している。