3.油圧作動油の各性状変化
油圧作動油のベースオイルは一般的に石油から精製された炭化水素からなり、油圧システム内で長期間高温高圧にさらされると、熱により酸化劣化します。 これを防止するために、添加剤には酸化防止剤が含まれています。ベースオイル自体の耐酸化劣化性能は、精製度の高いものほど良く、ベースオイルのグレード1〜3で区分されており、用途に応じて使い分けられています。 ・ベースオイル劣化による性状変化と一般的な管理値 A.粘度上昇 40℃粘度の上昇10%以内 B.全酸価上昇 作動油製造者のリコメンド C.色相変化 作動油製造者のリコメンド
油圧作動油の添加剤は用途や製造者によって、複数の種類の添加剤が含まれています。主な添加剤としては、酸化防止剤、極圧剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤等があります。 油圧作動油は、亜鉛系と非亜鉛系に分類され、ロングライフ化の観点から非亜鉛系が増加していますが、亜鉛系作動油も根強い需要があります。 ・添加剤消耗による性状変化と一般的な管理値 A.塩基価低下(亜鉛系のみ清浄分散剤の消耗を示す) 作動油製造者のリコメンド B.油中銅分増加極圧添加剤の分解を示す 作動油製造者のリコメンド C.消泡性悪化添加剤消耗による油中のスラッジ増加を示す 作動油製造者のリコメンド
何らかの原因で、機械内の油圧コンポーネントが破損した場合、油圧システム内が破損したコンポーネントの破片で汚染されます。 この場合は車体の異常や、フィルタに捕捉される金属分で判断されます。このような状態での運転は、他のコンポーネントの2次被害を引き起こしますので、必要に応じた作動油の フラッシング、油圧部品、オイルタンクの洗浄を行って下さい。 作動油の汚染度管理は、粒子法と重量法がありますが、この場合は、粗大異物による噛みこみ、作動不良等のポテンシャルも高く、汚染度管理での判断は難しいと思われます。 ギア油では、フェログラフィでの管理もありますが、基本的に油圧システム内で金属分が発生した場合は、何らかの異常と認識されます。
建設機械は、稼動時の油温が高くかつ夜間にはエンジンを停止することが多いため、エアブリーザを介して入ってくる空気中の水分が油圧タンク内で結露し油中の水分が増加する場合があります。 また、メンテナンスミスや、タンクのブリーザからの水分進入の事例もあり、水分は混入異物としてポテンシャルの高い物です。 油中に入った水分は、潤滑性を低下させるとともに、添加剤の劣化を促進させますので、混入を防止するよう管理が必要です。 ・水分混入の一般的な管理値 A.カールフィッシャー法にて、1000ppm以下
建設機械の油圧システムに外部から混入する固形分の大半は土砂と思われており、トラブルを起こした車体の油圧作動油の成分を定量分析すると、鉄や銅とともに、珪素の酸化物がよく検出されます。 この固形物は、空気中の粉塵としてブリーザから、シリンダのダストシールを介してシステム内に、またブレーカのジゼルシール部から等の経路から混入してきます。特にブレーカ作業を行う油圧ショベルでは、その傾向が顕著で、硬度も高いため、油圧コンポーネントに与えるダメージも大きいと言われています。 ・固形分混入の一般的な管理値 A.重量法 ミリポア(0.8μ)値 10mg以下 B.珪素の油中濃度 10ppm以下 |